「甘酒」の健康影響を
科学的に読み解く
麹(こうじ)をcogitate(コジテイト、熟考)シリーズ
甘酒は、毎日の食事に取り入れやすい、日本ならではの発酵飲料です。便通、肌のうるおい、皮膚状態、疲労感、食後血糖、腸内環境など、さまざまな健康への好ましい影響が研究されています。本ページでは、まず甘酒の魅力と期待される健康影響をわかりやすくお伝えし、その後に「どこまで研究で確かめられているか」を、客観的・中立的な立場で科学的に補足します。
宮木幸一先生(医学博士、前 東京大学特任教授)による文献レビューと
川村 孝 先生(医学博士、京都大学名誉教授)による確認を経た全10文献を掲載
甘酒を楽しむ、もう一つの理由
甘酒は、やさしい甘みと飲みやすさに加え、毎日のコンディションを整える飲み物として親しまれてきました。研究では、便通、肌の水分量、皮脂・肌状態、皮膚弾力、疲労感、食後血糖、腸内環境など、多彩なテーマが検討されています。
研究で扱われる甘酒には、米と米麹からつくる麹甘酒、酒粕を使う甘酒、両者を組み合わせた製品、牛乳と麹を用いるミルク甘酒などがあります。期待される働きは製品によって異なるため、各研究は試験に用いられた甘酒について得られた知見として、無理なく日々の食生活に生かすことが大切です。
健康影響の全体像
甘酒には、多様な健康への好ましい影響が期待されています。その期待を安心して楽しめるように、研究でどの程度確かめられているかを、対象となった製品と研究方法に沿ってやさしく整理しました。
企業関与
麹甘酒を知るための土台:包括的総説
麹甘酒の成分・機能性・安全性を幅広く整理したレビュー論文です。麹甘酒には300種類を超える成分が含まれ、代表的な成分としてオリゴ糖やエルゴチオネインが紹介されています。便通改善については比較的よく研究されている一方、肌や疲労感については今後さらに知見が積み重ねられる段階にあるとされ、1日約100 mLの摂取であれば血糖値や体重への影響は小さいことがヒト試験で確認されています。
評価:甘酒研究の全体像をつかむのにとても役立つ一本です。著者は製造企業に所属しており、その点は差し引いて読む必要がありますが、どの成分がどの働きを担うのかを今後明らかにしていくための、良い出発点となる資料です。
| 領域 | 主な研究 | 現在の読み方 |
|---|---|---|
| 便通 | 麹甘酒のヒト試験・総説 | :ヒト研究があり、便通を整える可能性が期待されます。今後は対象者や製品の違いを含めた検討が進むことが望まれます。 |
| 皮膚水分量 | 二重盲検プラセボ対照RCT(60人、8週) | :ヒトRCTで皮膚水分量の維持が示されており、肌のうるおいを支える可能性があります。今後さらに確認が進めば、理解が深まります。 |
| 皮脂・肌状態 | 酒粕・米麹併用甘酒のRCT(17人、4週) | :小規模ながらヒトRCTがあり、皮脂や肌状態への好ましい影響が期待されます。今後はより大きな研究での確認が期待されます。 |
| 皮膚弾力 | ミルク甘酒のRCT(40人、8週) | :ヒトRCTで皮膚弾力などへの好ましい影響が示されており、甘酒関連食品の可能性を広げるデータです。 |
| 腸管バリア・腸内細菌叢 | 黄麹・黒麹甘酒のマウス実験 | :動物実験で腸管バリアや腸内細菌叢への好ましい変化が示されており、人での検証が進めばさらに注目される領域です。 |
| 疲労感 | 酒粕・米麹併用甘酒のクロスオーバーRCT | :RCTで疲労感への好ましい影響が示されており、疲労回復を考えるうえで貴重なデータです。今後は成分や対象者の違いも含めた検討が期待されます。 |
| 安全性 | 過剰摂取試験(24人、4週) | :短期試験では大きな問題はみられず、日常的に取り入れる際の参考になります。今後は長期的な検討も進むことが期待されます。 |
エビデンスのピラミッド
介入群と対照群を無作為に割り付けて比較する
人を対象とするが、交絡や選択の偏りが残りやすい
作用機序の検討には有用だが、人での効果を直接証明しない
研究課題を考える手がかりだが、臨床効果の確証ではない
下:仮説生成に有用
皮膚・美容への影響
企業関与
麹甘酒:皮膚水分量
乾燥を気にする健康成人60人を対象に、麹甘酒118 g/日を8週間摂取した二重盲検プラセボ対照RCTでは、左頬の水分量はプラセボ群と比較して維持されました。一方、右頬では同様の結果が確認されず、経皮水分蒸散量(TEWL)にも群間の有意差はありませんでした。
評価:ヒトRCTで皮膚水分量の維持が示されたことは、麹甘酒の美容面の可能性を考えるうえで貴重なデータです。測定項目によって差の出方は異なるものの、肌のうるおいに関する好ましい作用が期待され、今後の研究の広がりが楽しみな領域です。
企業関与
酒粕・米麹併用甘酒:皮脂と肌印象
日本人女性17人を対象に、酒粕と米麹からつくる甘酒を4週間摂取した二重盲検プラセボ対照試験では、プラセボ群と比べて皮脂量が低下しました。あわせて行ったアンケートでは、甘酒群でのみ「顔色」「目の下のクマ」「髪のツヤ」「寝起きの良さ」の改善が挙げられ、目の下の明るさ(L値)という客観的な指標でも変化が確認されています。
評価:17人規模の試験ですが、アンケートだけでなく客観的な指標でも変化がみられた点は心強いデータです。細胞実験では皮脂腺での脂質蓄積を抑える働きも報告されており、今後より大きな規模での確認が期待されます。
大学主体
ミルク甘酒:肌の弾力とうるおい
牛乳と麹菌からつくる「ミルク甘酒」を8週間摂取した40人の二重盲検RCT(大妻女子大学が実施)では、摂取群で皮膚弾力性の指標が試験開始時と比べて有意に高まりました。経皮水分蒸散量(TEWL)についても、摂取群では試験開始時と比べて低下がみられています。
評価:大学が主体となって行った試験である点は安心材料のひとつです。ここで検討されたのは牛乳を使うミルク甘酒であり、米麹だけの甘酒とは原料が異なる点には留意しつつ、甘酒関連食品の可能性を広げるデータとして受け止められます。
企業関与
前身となった麹甘酒の肌研究
健康な成人女性32人を対象に、麹甘酒またはプラセボを8週間摂取してもらった二重盲検プラセボ対照試験です。麹甘酒群でプラセボ群と比べて皮膚バリア機能の指標に有意な改善がみられ、この結果は機能性表示食品の届出における科学的根拠のひとつとして活用されました。
評価:32人規模の予備的な試験ですが、その後さらに大きな規模(60人)で行われた皮膚水分量の研究(上記)へとつながる、橋渡し的な位置づけの研究です。機能性表示食品の届出は査読誌での審査とは制度が異なる点も、あわせて知っておきたい情報です。
便通・腸内環境への影響
麹甘酒の総説では、便通改善は比較的よく研究されている領域と位置づけられています。ヒト試験が行われていること自体が大切な前進であり、甘酒が毎日のすっきり感を支える可能性を感じさせるデータといえます。
腸内細菌叢や腸管バリアに関する黄麹・黒麹甘酒の知見は、現時点では主にマウス実験ですが、好ましい変化が報告されており、今後の人での研究が期待されます。
黄麹・黒麹甘酒と腸内環境(マウス実験)
マウスの腸炎モデルを用いた実験で、黒麹からつくる甘酒は抗酸化に関わる因子や、腸のバリアを支えるタンパク質(オクルジン)、腸を守る抗体(糞便中IgA)を増やすことが確認されました。黄麹甘酒では、腸内の善玉菌のひとつである Akkermansia muciniphila が増える変化がみられています。
評価:麹の種類によって働き方に違いがある可能性を示す、興味深い基礎データです。現時点ではマウスでの結果であり、人での効果を証明するものではありませんが、今後ヒトでの研究へとつながることが期待される領域です。
疲労感・食後血糖
企業関与
疲労感
酒粕と米麹を使用した甘酒では、日常的疲労感を評価した二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験があります。クロスオーバー設計は個人差を抑えやすい利点があります。
評価:複合製品での試験ではありますが、RCTで疲労感への好ましい変化が示されたことは注目に値します。甘酒関連食品が毎日の元気や回復感を支える可能性を示す、前向きに受け止めたいデータです。
企業関与
食後血糖
レビュー資料の総説では、約100 mL/日のヒト臨床試験において血糖値と体重増加に大きな影響を与えなかったことが記載されており、日常的に取り入れやすい食品としての安心感につながります。
重要:麹甘酒の甘味は、米でんぷんが麹の酵素によって分解されて生じるグルコースによります。「砂糖不使用」は糖質ゼロを意味しません。糖尿病や耐糖能異常のある人は、商品ごとの栄養成分表示と摂取量を確認してください。
安全性と摂取時の注意
麹甘酒は食品ですが、「食品だから量を問わず安全」という意味ではありません。
企業関与
通常の約3倍を摂取した場合の安全性試験
推奨量のおよそ3倍にあたる354 g/日を4週間摂取してもらった24人の試験が報告されています。試験期間を通じて、有害事象や体重の変化は確認されませんでした。
評価:かなり多い量を摂取しても大きな問題が生じなかったことは、日常的な摂取量(100〜200 mL程度/日)での安心感につながる心強いデータです。次に紹介するHbA1cの変化とあわせて、摂取量の目安を考えるうえで参考になる試験です。
いずれも基準範囲内とされますが、糖質量の多い摂取条件であり、糖尿病前症・糖尿病・耐糖能異常がある人に過剰摂取を勧める根拠にはなりません。
糖尿病などで食事療法・薬物療法を受けている人、腎疾患・肝疾患などで食事制限がある人、原材料にアレルギーがある人、妊娠・授乳中の人は、摂取開始・増量前に主治医または管理栄養士へ相談してください。麹甘酒は便秘、皮膚疾患、炎症性腸疾患、糖尿病などの治療薬ではありません。
このページの監修・文献確認
宮木幸一先生(医学博士、前 東京大学特任教授)が、甘酒の健康影響に関する文献をレビューしました。川村孝先生(医学博士、京都大学名誉教授)が、その文献レビューを確認しています。
本ページは、この文献レビューをもとに、甘酒の健康への好ましい影響を一般の皆さまにわかりやすくお届けするために構成しています。特定の病気の診断・治療・予防を目的とするものではなく、日々の食事を楽しむための科学情報です。
研究を読むポイント
RCTはヒトで効果を確かめるうえで貴重な研究です。小規模でも、今後の研究につながる大切な一歩になります。
研究ごとに結果の出方が少し異なることは珍しくありません。複数の知見を重ねていくことで、甘酒の魅力がよりはっきり見えてきます。
企業研究から得られるデータも、商品開発と健康研究をつなぐ大切な情報です。今後、さらに多様な研究機関の検証が加わると理解が深まります。
成分分析で多数の化合物が検出されること、細胞・動物で作用がみられること、人が摂取して健康上の利益を得ることは、それぞれ別の段階の証拠です。麹甘酒にはグルコース、オリゴ糖、遊離アミノ酸、グルコシルセラミド、エルゴチオネインなどが報告されていますが、含有されること自体は予防・治療効果を意味しません。以下の2つの成分分析研究は、その具体例です。
企業関与
麹甘酒に含まれる成分を整理した研究
麹甘酒に含まれるグルコース、オリゴ糖、遊離アミノ酸、グルコシルセラミド、エルゴチオネインなどの成分プロファイルを整理した総説です。著者自身が「健康・美容への関心の高まりから麹甘酒の消費は伸びているが、その効果効能についての科学的根拠は乏しい」と冒頭で率直に述べている点が特徴的です。
評価:この率直な記述は、むしろ信頼できる研究姿勢の表れといえます。成分がわかることと、その成分が実際に健康上の利益をもたらすと証明されることは別の段階であるという、このページ全体で大切にしたい視点を、著者自らが示してくれている資料です。
メタボローム解析でみえた350種類以上の成分
GC/MSやLC/MSといった分析機器を用いたメタボローム解析により、麹甘酒には350種類を超える物質が含まれる複合的な飲み物であることが明らかになりました。乳酸発酵させた甘酒との成分の違いについても検討されています。
評価:甘酒がいかに多様な成分からなる飲み物かを示す、基盤となる研究です。多くの成分が同定されたこと自体は、今後どの成分がどのように働くのかを探っていくための出発点であり、健康効果を直接証明するものではない点を踏まえて読むとよい資料です。
RCTなら無条件に確実、という意味ではありません。RCTであっても、参加者が少ない、試験期間が短い、複数の評価項目の一部だけに差がある、自社製品を製造する企業が研究を主導している、といった場合は慎重な解釈が必要です。また、複数の質の高いRCTを系統的に統合したレビューは、単独のRCTより強い判断材料になり得ます。
参考文献
甘酒の健康影響をより深く知りたい方のために、ページ作成の基礎とした文献を掲載しています。
1Ingredients, Functionality, and Safety of the Japanese Traditional Sweet Drink Amazake
Kurahashi A. Journal of Fungi (Basel). 2021;7(6):469. DOI: 10.3390/jof7060469. PMID: 34200668.
甘酒の成分、機能性、安全性を扱うナラティブレビュー。著者は製造企業所属。
2麹甘酒に含まれる成分について
倉橋 敦ほか.日本醸造協会誌. 2017;112(10):668–676. DOI: 10.6013/jbrewsocjapan.112.668.
麹甘酒の成分プロファイルと機能性仮説を整理した総説。
4Koji amazake Maintains Water Content in the Left Cheek Skin of Healthy Adults: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Parallel-Group, Comparative Trial
Enomoto T, Kojima-Nakamura A, Kodaira K, Oguro Y, Kurahashi A. Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology. 2022;15:1283–1291. DOI: 10.2147/CCID.S366979. PMID: 35836478.
麹甘酒118 g/日、60人、8週間の二重盲検RCT。
5Amazake made from sake cake and rice koji suppresses sebum content in differentiated hamster sebocytes and improves skin properties in humans
Maruki-Uchida H, Sai M, Yano S, Morita M, Maeda K. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry. 2020;84(8):1689–1695. DOI: 10.1080/09168451.2020.1756734. PMID: 32316864.
酒粕・米麹併用甘酒。ヒト試験は17人・4週間。
6Effects of Milk Amazake on Skin Elasticity, Hydration, and Transepidermal Water Loss: An 8-Week Double-Blind, Randomized, Controlled Trial
Shoji K, Kameda A, Furuichi K. Journal of Oleo Science. 2023;72(3):329–335. DOI: 10.5650/jos.ess22342. PMID: 36878586.
ミルク甘酒を対象とする40人・8週間の二重盲検RCT。
7Effects of Amazake Produced with Different Aspergillus on Gut Barrier and Microbiota
Nutrients. 2023. PMID: 37444313.
黄麹・黒麹甘酒を比較したマウス実験。
8酒粕と米麹を使用した甘酒の摂取による日常的疲労感へ及ぼす影響 ─ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験─
J-GLOBAL ID: 202002224842118490(森永製菓 Health Science Research Center 主導)。
酒粕・米麹併用製品を対象とする疲労感の試験。
9米麹甘酒摂取による肌へ及ぼす効果 ─ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験─
J-GLOBAL ID: 201902241258749470(八海醸造主導)。
皮膚バリアを扱った麹甘酒のRCT。機能性表示食品届出の根拠に活用された研究情報。
注:本ページは一般向けの科学情報です。個別の診断、治療、予防、栄養指導を目的とするものではありません。引用・学術利用の際は、各出版社、PubMed、J-GLOBAL等で原典および最新版の書誌情報を確認してください。

